2018年7月18日水曜日

180711 ハイパーレクシアのウラジミール君



ウラジミール君の1学期は,幼児並みの急激なペースで言葉を獲得したといっても過言ではない,驚異の期間となりました。

・6月頭:「今日はやばかった」と,にこにこして登場(彼は常ににこにこしています)。
どうやら,ぐるぐる考えているうちに一時的に落ち込んだ模様。言葉を獲得したのでいろいろ考えられるようになり,だから落ち込んだように私には見えました。(ただ,それを説明できるほどの言語能力はまだないようです。)・・・よく分かったような分からないような印象を残して,彼は帰っていきました。

・6月中旬:
誕生日,センター3Bを,構文と単語の知識を使って読破。
「英語を読むってこういうことなのか…!」と初めて実感しているのが分かりました。
英語力,そして言語能力の成長を感じる,19歳の最初の日となりました。

このころ,日本語のまる読みを卒業。
(新聞記事を1文ずつ交互に音読。あらすじをイメージ化し,自分の言葉で説明してもらう)
2ヵ月半続けて,文字から意味への回路が,だいぶつながったようです。

・6月下旬
単語を覚えたいというので,「英単語ピーナツBASIC」を週に100個覚えてくることを宿題に。
以後毎週,単語テストをしています。
もじこ塾の他の生徒の例にもれず,彼も単語の定着率があまり良くありません。
しかし多くの生徒と違うのは,一度決めたことは絶対に守ること。ルーチンをこなすことは,彼には簡単なようです。場数をこなすので,少しずつですが覚えられます。

・7月上旬
「昨日,音楽を聴いていたら,はじめて歌詞の意味が飛び込んできて,びっくりした」。セカオワが,明るい曲調で重い内容を歌っていたのを知って驚いたらしいのですが・・・いままでセカオワを歌詞抜きで聴いていたことが驚きですΣ(゚Д゚)。
文字と意味がつながったら,なぜか歌詞の意味がわかるようになったそうです。

このころ,小学校時代の様子を話してくれました。
彼は小学校の数年を海外で過ごしています。「同じマンション内に,誰かしら一緒に遊ぶ子たちはいつもいたけれど,日本に帰ってくるまでほとんどしゃべったことがない。スポーツが好きなので,「ヘイ!パス」とかそういうことしか言わなかった」。
・・・このころには私のなかで,ウラジミールはハイパーレクシアIII型ではないかとの思いが,ほぼ確信に変わっていました。海外生活でわかりにくくなっていたようですが,言葉はかなり遅かったようです。
このほか,ルーチンを徹底的に守れる,大局的な思考はみられない,一方的にとめどなく話し続けて止まらない…などが,決め手となりました。

彼のハイパーレクシアは,自閉症風の症状とともにみられるものです。
ハイパーレクシアのなかでも稀なようですが,このようなタイプもいるそうです。
彼も,ASDというには社交的ですし,こだわりも強くないですが,言葉の遅さ,会話がキャッチボールになりにくい点は,ASD的ともいえます。

・7月中旬
「初めて,趣味で読書をしてます」。
文字を読んで,内容が頭に入ってくるようになったとのこと。
人間観察が大好きだそうで,心理学の一般書を読んでいるそうです。

一日平均9時間の勉強時間を,淡々と回しているそうです。
毎回,「あー疲れた。家に帰りたい」と笑顔で言いながら帰っていきます。

~~~
授業内容
(・日本語の新聞記事を読んで,内容を自分の言葉で説明してもらう)
・単語テスト(ピーナッツ):英単語を見せて,日本語の意味を言ってもらう
・宿題の確認:前回解いた問題から,単語/構文テストを行う
・精読:センター英語の問題を,1文ずつ精読。最終的には解く
・整序問題,文法語法問題:整序は目の前で解いてもらう。文法語法は宿題


ハイパーレクシアIII型のウラジミール君は,文字から意味への回路が極端に弱かったのを,日本語については1学期でかなり克服することに成功しました。
英語に応用するのがこれからの課題ですが,まだまだのびるように見えます。
夏から秋にかけてのウラジミールの成長が楽しみです。