学習支援・多様性を支える教育に関心のある「わっち」君が、フォニックス講座の助手を務めてくれました。とっても詳しい、フォニックス講座の授業報告です:
フォニックス講座に使うもの: フォニックス表、歯形模型、手鏡、ビンゴ、マウスシールド、ハリボー オプション:ブロック体練習帳 |
ご覧いただきありがとうございます、助手見習いの「わっち」です。もじこ塾の冬季フォニックス講座についてご紹介します。
もじこ塾では普段から英語の読み書きに困難のある子どもに向けフォニックスをもとに読めるようになるための指導を行なっていますが、今回の講座は3日間で一通りフォニックスを学び学習への取っ掛かりを掴む入門編とも言える講座です。
〇フォニックス講座について
アルファベットの”a”は名前こそ「エー」ですが、読み方は”apple”,”all”,”ate”では異なります。文字や単語の認識が苦手なディスレクシアの方にとっては、それぞれの文字を捉え、音を繋げて単語を発音することに大変な苦労を要します。そこで、フォニックスを学ぶことによって正確な発音を身につけ単語を読むための方法を身につけていき、英語を「意味不明な文字の羅列」から「頑張れば解読可能な言語」にしていきます。そのために、まずは各アルファベットに対応してどんな音があるのか、そして発音にどんな法則があるのかをじっくり学んでいきます。
今回はマンツーマンでの指導となりましたが、保護者の方にも参加していただき、先生と助手を合わせ4人で取り組みました。ご本人は普段先生が黒板に書く英語を読んだり覚えたりするのが難しいとのこと。3日間頑張りましょう!
〇アルファベットの練習
英語は、自分が書ける単語しか読むことはできません。→そんなことはないです(汗)。書ける以上に読める単語は多いです、特にディスレクシアは。
純粋書字訓練を行うのは、「書けるようになると、読めるようになる」からなのです。もっと不思議なのですが。
ディスレクシアの方にはしばしばアルファベットを書くことの困難も見られることから、まずは正確に書くためにアルファベットを構成するパーツを練習していきます。
※そうなのです。ディスレクシアは「読めない」ことのはずなのですが、なぜか書字そのものにも苦労する一派がいます。書くことの不器用、あるいはいろいろ手一杯できれいに書くことまで気が回らないなど。。
日本語とは形が異なるため初めは不恰好でも、少し練習すれば上手くなっていきます。なかなか学校でアルファベットを綺麗に書く練習を時間をかけてすることは少ないですし、そんなことより単語の暗記や文法が優先で進みますから意外と重要な過程です。
〇フォニックス学習
次にいよいよフォニックス学習です。英語の読みは44の音からなります。頻繁に登場する音もあれば一部の単語にしか使われない音もありますから、頻度順に並んだ表を使って練習していきます。
初めはやはりアルファベットの名前と音の混同がありましたが、初日は頻出29音(!)も扱うので段々と慣れていきます。透明なフェイスシールドを着用し口の動きを確認しながら一つ一つ学んでいき、時には舌の動きを正確に表すために口の模型も使用したりしながらイメージを掴みます。
日本語の発音とは舌の動かし方も異なるので普段使わない筋肉が必要です。もじこ先生は正確な発音のために舌のトレーニングもなさったとのこと!英語でも筋トレは有効なんですね。
※私はフォニックスを教えようと思ってから歯列矯正を行ったのですが、その一環で矯正歯科で舌のトレーニングを行いました。ちなみにテキストはこちら→★
正確な発音はディスレクシアの方にとって文字と音を繋げて覚えるために必須です。とっても疲れる学習ですが、なんと今回はとってもタフな受講生で集中が続いたので一気に29音、進めることができました。すごい!
音の確認ができたらビンゴゲームで読みを練習していきます。英単語が並んだビンゴシートの単語を参加者で順に読み上げていき、いくつかのルールのもとに列を揃えることを競います。初めて自分で読む単語を一つ一つ音を確認しながら繋げていくのは大変で、ビンゴの戦略にまで頭が回らなかったかもしれません(笑)ですがゲーム形式だと取り組みやすく、ご家庭でも継続していけば自然と読みが身についていく気がします。他にももじこ塾では多種多様なゲームが用意されていて、遊びの中で英語の発音に多く触れインプットの絶対量を増やすなかで「音で単語を覚える」ことから定着を促しています。
※なんでもゲーム風にすることが、ディスレクシア英語教育では大事だと思っています。
この教材の見本を公開しています→★
英語の発音でも特に特徴的な"Magic e"と呼ばれる発音の法則についても学習しました。最後に"e"がつく単語は直前の母音の音が変化しますが、単語や文全体を見渡して捉えることが難しい特性がある場合はなかなか注意を向けづらく、間違えやすい発音の一つです。法則を覚えて新出単語を読めるようになる、というよりかは、各単語の発音を教える際に“fat”“fate”でなぜ読みが異なるかを説明するための道具に過ぎないかもしれません。
初日は覚えることばかりで大変だったと思いますが、口の形などコツは掴んできていて早速効果が出てきているように感じました。授業の最後には自分の発音を録音して家でも練習できるようにし(やはり自分の声・発音を聞くと覚えやすい人もいるそうです)、次回に備えました。
2日目、3日目も基本的な流れは同じです。アルファベットの書き方や新しい音を勉強しながら、復習を兼ねてビンゴやカードゲームを通じ読みの練習をしていきます。段々慣れてくると戦略性も見えてきて盛り上がります笑
習熟度が上がってくると、これまでは単語を構成する音を繋げて呼んでいたのを、逆に単語の読みを聞いていくつの音に分解できるかを捉えてみる練習もします。聞こえた音を一つ一つ分解・検討してフォニックス表のどれに対応するかを考えるのは特に難しいうえ疲労の大きいチャレンジで、数単語取り組むともうヘトヘトでした。
※音韻認識の練習ですね。これは疲れます。でも大事です。
〇最後に
一口にディスレクシアと言っても人によって特性は全く異なります。フォニックス表の音を練習すれば読めるようになるかと言えばそうではなく、得意・不得意に応じて練習方法を変えたり、ペース配分を考えたりと個人に応じた設計も重要です。3日間でも、適切な練習・環境を整えれば英語が全く読めなかったのが改善に繋がり、英語に対する認識がガラッと変わる様子が見て取れました!
普段英語が読めない・読みにくいと学校の授業も何を書いて言っているのか分からず、モチベーションどころの話ではないと思いますが、学び方で大きく変わります。これをご覧になっている方でもし普段英語を学ぶ上でお困りの様子が見られたら、ぜひ一度ご相談ください!